私の父はスロプロでした

240 :スロプロの父とガンダム 2006/12/01(金) 19:11:37 ID:ijqVJ8iT


もうあれから何年になるだろうか。
私には2つ下の弟がいたのだけれど、私が午前中だけの学校から帰ると
家で待ってる弟と一緒に父親がいつもいるホールへと出かけるのが日課だった。
休憩所の椅子で昼ドラをぼんやり眺めたり、なんとなく弟とジャレあったりしてると
一日が過ぎ去って行くのだが、運がいいと気前よい人達がチョコレートやら
オレンジジュースやらを恵んでくれるので、家で親の帰りを待っているよりも
断然快適でスリリングな日常だった。
母は物心ついた時にはもういなかった。育ての母はいたのだけれど、私が小学校に上がる
一年前に出ていってしまった。てっきりその人が母だとばかり思っていたのだが、
父があの人はおまえの本当の親じゃないと言った時の衝撃は、子供ながらも
かなりのものだったのを今でも覚えている。






241 :スロプロの父とガンダム 2006/12/01(金) 19:12:18 ID:ijqVJ8iT


育ての母は特に優しい人では無かったが、僕らを死なない程度には食わせてくれたし
凍死しない程度には服も買ってくれた。世間の親ってもんはそんな感じだとばかり思ってたので
特に自分の不幸を呪った覚えは無かった。
ここで父の事をちょっと話しておくと、いわゆるスロプロのジグマタイプであったのだと思う。
帰宅時間はまちまちなのだが、毎朝きっちり私が学校に行く前に起きて朝飯を作り、
いつのもホールに開店15分前に並ぶというのを欠かしたのを数えた程しか記憶にない。
非常に寡黙で無駄が嫌いな人で、歯磨きの時に水を出しっぱなしにするとぶたれるぐらい怒るし
トイレの小は弟と二人で一緒にしないと水を流したらいけないルールもあった。
当時私は幼かったので機種やらなんやらは覚えてはいないが、学校から帰って父を覗きに行くと
その日決めた台から移動してる雰囲気は無かったので、今でいうモーニングからの設定判別
高設定タコ粘りか、低設定でもDDT&リプはずしで100%超えるコンドル系だったのだろうか?



242 :スロプロの父とガンダム 2006/12/01(金) 19:13:00 ID:ijqVJ8iT


ホールは絵に描いたような一世代前のレトロな感じで、客層も設定もなだらかな店であった。
そこに父は毎朝通ってはこつこつ小金を稼いでいたんだと思う。

毎日、店の中で生活する僕らにもその空間で上手な「立ち回り」を知らず知らず学んでいった。
店の人に迷惑をかけない事。特に店長と呼ばれている人は一番偉いってのはなんとなくすぐ理解した。
幸い、店の店員は全員子供好きなせいか優しく接してくれた。気になったのは2人程
言葉が不自由な大人がいたのだが、今思うと多分、韓国か中国の人だったんだろうと思う。
私ら子供にとってパチ●コ店というのは宝島みたいなもので、銀色に光るコインやパチ●コ玉は
当然、拾ってはポケットにしまい込み、家に持って帰っては自分の宝箱にしまうのが
毎日の楽しみでもあった。一人だけ特に優しいお姉さんがいて、その人が極稀にカウンターで
接客してる時に拾ったコインを見せると、相応のお菓子やジュースと交換してくれた。
後々になんとなくわかったのだが、多分店長の娘あたりだったのだと思う。



243 :スロプロの父とガンダム 2006/12/01(金) 19:14:09 ID:ijqVJ8iT


私と弟にとって木曜日は特別な日だった。木曜日の夕方5時半は父がホールにいなくても遊びに行き、
店員さんにTVのチャンネルをあわせてもらっていた。「機動戦士ガンダム」の放送があるからだ。
やはり子供心にロボットの戦闘というのは楽しくて、でも正義が必ずしも正しく、勝つものではない
なんかのテーマが凄くはまったのだと思う。他にも似たようなアニメがあったが、弟のいれ込み方が
全く違ったのを覚えている。
私と弟が特に好きだったモビルスーツがある。「グフ」だった。
青くて一機しかいなくて角があって、ガンダムと互角ぐらい強かったからだ。
ある日、私と弟に衝撃がおきた。カウンターの景品の棚にグフのプラモデルの箱が並んだのである。
今まで散々やんちゃな弟をなだめて来たのだが、景品棚の前でグフの箱に今でも手を伸ばしそうな
弟に「見てるだけだからな」と言う私も正直触りたくて仕方がなかった。



244 :スロプロの父とガンダム 2006/12/01(金) 19:14:56 ID:ijqVJ8iT


ある秋の夕方、弟が車に跳ねられた。
その日も木曜日で、私は弟とガンダムの時間前にホールに遊びに来た。今日は何故か父が家にいるので
家ではTVは見せてもらえそうにないからであった。
店の前に来ると愕然となった。店が閉まっているのである。
どうしようどうしようと慌てていると、店長が店の前で何か客と雑談をしていて、私達二人を
見つけると、裏口から店の中に入れてくれた。今日は新しい台が入るから6時から
営業するんだよ、と教えてくれた。
誰もいないホールの中はやけに新鮮だった。いつもの通りにガンダムを見終えると、
エンディングテーマと一緒に私と弟はガンダムごっこをして誰もいないホールを駆け回った。
私はそろそろ店が始まると思い、弟を探してホールを歩き回ったら、弟は椅子に座って
パチ●コを打つ真似をしていた。と、ガラガラガラと店のシャッターがゆっくり上がり出して
這いつくばったおじさん達が次々にシャッターをかいくぐってホールの通路を走ってきた。



245 :スロプロの父とガンダム 2006/12/01(金) 19:15:39 ID:ijqVJ8iT


何人もの男が弟の座ってる台を通りすぎて行くのだが、その内の一人が椅子に軽くぶつかったみたいで
弟の椅子がくるっと回転し、その拍子にバランスを崩して床に落ちてしまった。
一瞬間を置いて号泣する弟、その時私はあぁ、また泣いたぐらいにしか思わなかったのだが
弟は起きあがると私とは反対側にいる出口の方へ泣きながら駆け出していった。
一人で家に帰るつもりか?とやっと通行出来るようになった通路を歩いて店の前に出たら
弟が知らない人に頭だけ抱えられていた。もう泣き声は聞こえなかった。
車の持ち主らしき人が誰か救急車!と必死に叫んでいたのを他人事のように眺めていたのを覚えている。

その日遅く帰ってきた父は私に一言、「弟は病院でしばらく暮らす事になる」とだけ教えてくれた。
次の日から生活が激変した。朝起きると父が既に出かける瞬間だった。
私が何処に行くの?と聞くと、暫く黙った父が「これからもっと金が必要になる。
それだとあのホールでは稼げないから遠くの店に行ってくる」と言って出ていってしまった。



246 :スロプロの父とガンダム 2006/12/01(金) 19:16:25 ID:ijqVJ8iT


私はトイレに入った。一人で用を足して、いつもより濁りのない便器の水を暫く眺めた。
父の言い付けを破って流してみた。流した瞬間に父のもっと金がいると言う言葉を思い出した。
途端にかなりの罪悪感に襲われた。私はその日は手と顔を洗わずにテーブルの上に置いてあった
朝食を一人で食べ、学校へ行った。帰りにホールに行ってみるとやはり父はいなかった。
店長を見つけ、迷惑かけてごめんなさいと言うと、 店長はこっちもごめんな、と言った。
これからもここに来てもいいですか?と聞くと、絶対に走らないならいいよ、と言ってくれた。
                                          
暫くして父と一緒に病院に行った。集中治療室から出てこれた弟に初めて会った。
足と腰にギプスとコルセットのようなものがついていたが、意外にも弟は元気そうだった。
ただ、弟はガンダムはどうなったの? とそればかり気になっていた。病院ではガンダムは
どうやら見れないらしかった。



247 :スロプロの父とガンダム 2006/12/01(金) 19:17:37 ID:ijqVJ8iT


その日から私には目標が出来た。
学校が終わるといつものホールに遊びに行って、店員さんに見つからないようにいつもより露骨に
玉を拾うようになった。店から駐車場への道が意外と穴場で、くまなく調べて全部拾った。
玉拾いが終わると病院に行って弟の話し相手になるのが日課になった。
                                           
2週間程経ったある日、カウンターにお菓子とコインを交換してくれるお姉さんがホールにいた。
私は意を決してその人に今まで貯めたパチ●コ玉を全部見せた。
その人はそれを見ると少し曇った顔をしてこれはどうしたの?と聞いてきた。
正直に店内と店の周りに落ちているのを拾ったと言うと、泥のついた玉を見て
少しだけ眉間の皺が緩んだが、全部お菓子に換えて欲しいの?と聞くその人に私は首を振った。



248 :スロプロの父とガンダム 2006/12/01(金) 19:18:28 ID:ijqVJ8iT


あれが欲しいです。と言ってカウンターの棚の一部を指した。僕らが散々眺めていたグフである。
それを見るとその人は私を休憩所に招き、雑巾とドル箱を一つ持ってきた。
汚れている玉を拭いてここに移しなさいと言われた。私は言われたとおりに必死で拭いた。
2時間程かかって拭き終ると、その女性と一緒にジェットカウンターに玉を流した。
541と数字が出たのだが、どうやらグフには260玉程足りないみたいだった。
明日から学校が終わったら店長の所に来なさい。とその女性に言われた。
その日は不安でたまらなかったが、次の日恐る恐る店長の前に顔を出すと銀色の棒を渡してくれた。
その棒を持ちながら店長と一緒にホールを歩き、銀色の棒を玉に近づけると
面白いようにパチ●コ玉が寄って来た。それから3日間、同じ事をやって貯めた玉を流したら
322という数字が出て、店長は私にグフのプラモデルをくれた。



249 :スロプロの父とガンダム 2006/12/01(金) 19:19:27 ID:ijqVJ8iT


次の日から私は木曜日以外は弟の病院に直行した。弟にグフのプラモデルを見せると弟の目が
2倍ぐらいに大きくなったのを覚えている。その日から弟の前でプラモデル作りに没頭した。
今でこそ思うのだが、プラモデルを上手く作るには、最低でもカッターとハケがついている
接着剤が必要なのは十分に予想出来るが、当時の私にはそれを買う金も無いし、
第一プラモデルを作るの自体が初めてだったものだから、全てがチャレンジの連続だった。
色々失敗を重ね、なんとかグフが組みあがった。待ちに待ったという感じの弟は、
「触ってもいい?」と私に聞いてきて、私は「これはおまえにあげる」と言うと弟に手渡した。
所々細かいツメがトゲみたいにピンピン飛び出してるグフは、弟の手に渡ると病院の照明に反射して
表面にいっぱいこびり付いている接着剤に反射してキラキラしていた。
すると、グフをいじっていた弟の顔が急に曇った。どうしたのだろうとずっと見ていたら、
「これ、足が動かない」と言うと強引に足を曲げようと力を入れだした。



250 :スロプロの父とガンダム 2006/12/01(金) 19:20:34 ID:ijqVJ8iT


多分私が接着剤を下手に塗ってしまった為に、関節の部分が曲がらなくなっていたのであろう。
弟は強引に足を曲げようとすると、ボキ、と鈍い音がしてグフの足がもげてしまった。
「あ・・」と声を出す私を尻目に、弟は何を思ったか、もう一本の足も引っこ抜いた。
私はベットの上の弟に飛びかかった。弟は私に殴られる前に何故か号泣しだしたが、私は弟を10数発
殴って同じ病室のおじさんに取り押さえられた。
私は病室脇の椅子に年配の看護婦さんと一緒に座らされた。
その看護婦さんは私にこう言った。「○○ちゃんね、どうやら・・・一生足が不自由になりそうなの」
私が大声を出して狂い泣きしたのはこの時が初めてだったと思う。
どうしてグフの足を動かせるように作れなかったのだろう、と。
この日から私は弟の見舞いに行かなくなった。



251 :スロプロの父とガンダム 2006/12/01(金) 19:21:35 ID:ijqVJ8iT


12月に入り、いよいよ寒くなった早朝は、それでも朝早く出かける父のスタイルは変わらなかった。
もう父が台を遊戯してる姿は見られなくなったのだが、ポケットからコインが度々出て来る辺りから
やはりどこか遠いホールで立ち回っているのであろう。
弟がこの家からいなくなってからは、ほんの僅かだが父との会話が増えた。
とは言っても弟の現状報告やら事務的な会話だけではあったが。
年末がいよいよ近づいてきて、私はそれでも木曜日のガンダムだけはいつのもホールに行って
見せてもらった。その日、ガンダムの放送の最終話が流れた。
私はその放送を見終わると弟の病院に駆け出した。どうしても弟に伝えてやりたい事があったからだ。
病院の階段を駆け上がり、弟の病室に入ると弟の手には今見たばかりのものが大切に抱えられていた。
赤い彗星がパイロットの、ガンダムを操縦不能まで追いつめた、足無しのモビルスーツ、ジオングであった。



253 :スロプロの父とガンダム 2006/12/01(金) 19:23:01 ID:ijqVJ8iT


あれから何年も月日が経ち余談になるが、
一回だけ父の親戚と名乗る男性が私と弟の住むアパートに来た事がある。
その頃は多少、私も社会の仕組みを理解し始め、自分の父がどういうタイプの人間かも
わかる年頃になっていた。
その人から色々興味ある話しを聞いたのだが、事故の示談金で得た慰謝料は一銭も使わずに
弟名義で銀行に定期預金されているらしかった。父みたいな生活をしている者には奇跡的にも
国民健康保険やら低額ながらも入院保険とかの加入もあったみたいで、その足りない入院費を
稼ぐ為に父は収支の荒いスタイルに変えたらしかったのである。
情報の得難い当時に、ジオングの存在を確認して取り寄せたのも勿論父であったみたいだし、
5日に一度、定期的に朝の8時に見舞いに来ていたのも後の弟から聞いた。



254 :スロプロの父とガンダム 2006/12/01(金) 19:24:06 ID:ijqVJ8iT


だがその寡黙な父も、荒い勝負のつけなのかどうなのか、夜遅く顔を腫らせて帰ってくる事も
あったし、3日間ぐらい全く帰ってこない時期もあった。
彼は彼なりに必死で私達を育てて来たのだろうと思うと、それまで抱いてた心境との
ギャップに凄く複雑だった。今でこそ思えば、彼はホールで数多くの修羅場をくぐってきたんだろうと思う。
今は二人とも独立して父とは音信不通だが、ライターになった弟の家の机の書斎には、
今でもジオングと上半身だけのグフが置いてあるそうです。
                                               
メリークリスマス。今週は年末前の激出し一週間だが
子供がおる奴は金が無くなる前に先に子供にプレゼント買いなさい。

     完



256 :( ´∀`)ノ7777さん 2006/12/01(金) 19:58:29 ID:nWzjh2tq


涙拭いた。


261 :( ´∀`)ノ7777さん 2006/12/02(土) 02:17:27 ID:knM00O+M


ザクとは違うのだよ。ザクとはぁぁ!!


262 :( ´∀`)ノ7777さん 2006/12/02(土) 02:17:56 ID:t0mcgy81


・゜・(ノД`)・゜・


266 :( ´∀`)ノ7777さん 2006/12/02(土) 05:39:52 ID:NKvNV2yn


文章力があるよな。読んでいて苦にならないというか。
ものすごく説得力のある文章だ。



269 :( ´∀`)ノ7777さん 2006/12/02(土) 10:25:32 ID:B1EV+MW/


ガンダムよかった。目頭が熱くなった(>_<)


255 :( ´∀`)ノ7777さん 2006/12/01(金) 19:34:30 ID:U11AeZTx


全米が泣いた(ノд<。)




【転載元】http://news18.2ch.net/test/read.cgi/slot/1164707377/ ●注目記事
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この記事へのコメント

- 鬼女速名無しさん - 2013年01月18日 14:15:05

まだホールに人情とかがあった時代の話だな




【面白記事】 【スロパチ関連】
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