パチ屋で優しくしてくれた兄ちゃんへ
ガキの頃はじめてスロットやった時に、ご多分に漏れず全然わかんなくて
隣の兄ちゃんに7揃えんのとか全部やってもらってた
その兄ちゃんはいつも居て、次行った時もいて、隣で打ったらやっぱり全部やってくれた
そのうち普通の話とかもするようになって、気付いたらかなり仲良くなってた
俺はいっつもその兄ちゃんの隣の台で打ってて、空いてない時は後ろで見てて
兄ちゃんは兄ちゃんで「ほんとは隣どうしで打ったりすんの良くないんだよねぇ」とか言いながらも
俺が来るとジュース買ってくれたり打ち方教えてくれたりして随分可愛がってくれた
そんなある日兄ちゃんがアレックスの6をツモって
俺が夕方行った頃にはもう3箱以上積み上げていた(つっても昔あった、一箱1000枚程度の箱だけど)
俺が隣行くと嬉しそうな顔して「これ6なんだよ、さっき判別も受かったよ」とか言ってて
そんで俺も目キラキラさせながら「すげえ!判別って何だかしらないけど兄ちゃんすげえ!」って感じだった
427 :( ´∀`)ノ7777さん 2006/11/04(土) 10:38:50 ID:4YM2LyMo
そんな兄ちゃんの右隣が空いたので俺も座った(右隣だとリプレイを外してもらえた)
兄ちゃんはいつもは静かな人で、俺がちょっとはしゃぐと「ダメだようるさくしたら」とか困った顔で言う人だったけど
その日だけはやたら上機嫌で、俺の台見ながら「あーそれはブドウのこぼしだよー」とか
「それハズれたら入ってるよ、右に鳥狙って、鳥、ほら、1,2の3」とか言ってて
そうこうしてる内に俺も入って、「兄ちゃんリプレイ来た!」「そっか、じゃあろくに見ないでビシ!」「うわ!外れた!」とか
そんな感じでいつになくフィーバーしてた。
で、閉店まで上機嫌で打ちつづけた結果、兄ちゃんは結局5500枚、俺も2200枚くらい出た。7枚だったけど
当時の俺からしたら3万は超大金で、兄ちゃんが手にした7万幾らなんでのはもう一財産だった。
換金待ちながら「帰り遅くなって平気ならご飯食べに行こうか?」とか兄ちゃんが言って、俺もやたら興奮してたから
「肉食いたい」とか肉なんか別に食いたくないのに言ってみたりして、そんで金受け取って道に出たら
変なチンピラが3人、換金所の前で腕組みしながら立ってた。
428 :( ´∀`)ノ7777さん 2006/11/04(土) 10:39:58 ID:4YM2LyMo
換金所は街灯もまばらな裏路地に立ってて、裏路地抜けると全店閉店してる人気の無い商店街があって、
表通りまでは徒歩2分って感じだった。人通りは全く無く、強盗には打ってつけの場所って感じだった。
それまで上機嫌だった気分が吹き飛んで、俺はおなかのあたりになんかイヤな重さを感じた。
俺と兄ちゃんは普通を装って表通りに向かって歩き出した。ちらと振り返るとやはりチンピラもついてきてる。
俺は兄ちゃんを見た。兄ちゃんも気付いてるみたいで、かなり真剣な顔をしていた。また振り返ると
チンピラが明らかに歩調を早めていた。
走り出したいけど走り出したら追っかけてくるだろうし、叫びたいけど叫んだら・・・って感じの
緊張感で体全体がドクドクしてた。と、ふっと兄ちゃんが俺のほうにさりげなく手を出した。そして
「多分あいつらはこの金目当てだから、無いってわかったら退散すると思うから。」って小声で言った。
差し出されたそれを見ると兄ちゃんの財布。
429 :( ´∀`)ノ7777さん 2006/11/04(土) 10:40:52 ID:4YM2LyMo
俺が兄ちゃんの財布を受け取ってダッシュで逃げる→兄ちゃんはその場に残ってあいつらの相手
という作戦は分かったものの、当時ガキだった俺は「俺だけ逃げるのはいかがなものか」と言う
疑問を捨てられなくて、なかなか動けなかった。今思うと単に決定的な瞬間を先送りにしたかった
だけだったんだと思う。そうこうしてる間にもうすぐ後ろにチンピラは迫って来てる。
振り返らなくてもわかるくらいに。
「そしたら俺、警察呼ぶよ」と俺は小声で言った。すると兄ちゃんはこっちを見ずに、でも
滅多にない強い口調で言った。
「絶対呼ぶな。走れ。」
同時くらいに後ろから「オイ」って声がして、それを合図に俺はもう何も考えずに走り出した。
「てめえ、待て、こいつ殺すぞ!」って声が聞こえたけど、走ってくる足音は聞こえなかった。それでも
俺は走りつづけた。表通りへの距離は30メートルくらいだったけど、やたら長く感じた。今にも
後ろから肩をつかまれそうな気がした。まるで夢の中で走ってる感じだった。
430 :( ´∀`)ノ7777さん 2006/11/04(土) 10:41:54 ID:4YM2LyMo
表通りにつくと、サラリーマンが二人くらい、ハアハア言ってる俺に異様な視線をくれて通り過ぎた。
その後ろからはまたサラリーマンの集団。車も数台走ってて、街灯もたくさん立ってて明るい。泣きたく
なるくらいに安心する空間だった。そして安心した瞬間、兄ちゃんのことが頭に浮かんだ。
でも暗がりを振り返ると、もうそこには誰の気配もなかった。
「連れ去られちゃったんだ」と思った。しかし俺は何をするでもなく、そのまま10分くらいそこに立ち尽くしていた。
兄ちゃん出てきてくれないかな、とか考えながら。かと思うとちょっと人通りが途切れると途端にドキドキしだして
タクシーかなんか通ると「良かった・・・」って安心したりして、今考えると何してんだ?って感じだけど
そん時は本当に混乱してたんだと思う。
そうこうしてる内に冷静になってきて、ふいに一つの案が俺の頭に浮かんだ。
それは「2対3ならもしかして・・・」と言う、ガキ丸出しの甘くてヒロイックな発想だった。俺は人通りが途切れた
頃を見計らって、人目を気にしながら近くにあった植え込みに財布を二つ埋めた。俺のと兄ちゃんのと。
何故かそうすると安心した。これでボコボコにされてもいいや、と思えた。むしろちょっとくらい殴られても
武勇伝みたいでカッコいいような気すらした。という訳で財布を埋め終わった俺は裏路地にむけて走り出した。
431 :( ´∀`)ノ7777さん 2006/11/04(土) 10:42:53 ID:4YM2LyMo
商店街も路地も静かだった。4人はすぐに見つかった。閉まったスーパーの駐車場の、建物の裏手のほうに
暗がりになってる部分があった。そこは夜になると人通りも明かりも無く、そして通りからは一切見えないという、
そのあまりの絶妙な条件から、よく喧嘩なんかで使われてるスポットだった。そこで人の気配を感じた。
俺は走った。そして途中まで駐車場を横切ったあたりで俺の足は止まった。
4人が何をやってるかがうっすらと見えたのだった。
正座してる兄ちゃんの顔を、一人の男がサッカーボールみたいに蹴り上げてた。他の二人はそれを
寝そべりながら見てた。蹴られた兄ちゃんは何かを吐いているみたいだった。それを見た男は、何か
言いながら、また兄ちゃんを蹴り上げた。本当にサッカーボールみたいだった。
432 :( ´∀`)ノ7777さん 2006/11/04(土) 10:43:50 ID:4YM2LyMo
それはもう衝撃的な光景としか言いようが無く、加勢しようとか、あわよくば勝とうとか、さっきまで
考えてた虫のいい想像は全部吹き飛んで、俺はひたすらにガクガク震えていた。ほとんど真っ暗だったから
シルエットしか見えなくて、「げぇ」とか言って吐いてる声だけやたら響いててもうとにかく怖かった。
見つかったらヤバイから逃げなきゃいけない、と思ったけど、でも物音立てたらやばいとか、さっきまで
足音バシバシ立てて走ってたくせに考えちゃって動けなかった。それどころか心臓の音が聞こえちゃうんじゃ
ねえかとか、そんなことにまでビビってた。
やがて兄ちゃんを蹴ってた奴が俺に気付いた。そしてゆっくりと俺に近づいてきた。俺は心臓止まるくらい
ビビりながら、そして動けないまま、でも兄ちゃん蹴るのが止まって良かった、とかぼんやりと考えたりしてた。
そして土下座しようかどうか俺が迷っていたその時、ようやく顔が見えた。
それは兄ちゃんだった。
433 :( ´∀`)ノ7777さん 2006/11/04(土) 10:44:48 ID:4YM2LyMo
「逃げろって言ったのに。」と困ったような顔をしていた。それは全く普通のいつもの兄ちゃんだった。
俺はマンガみたいに口をぱくぱくさせた。アレ?なんで蹴られてた兄ちゃんがイルノ?って感じ。
勘違いに気付くのに1分くらいかかった。
兄ちゃんは「ちょっと待ってて。」と言って、暗がりに戻った。俺もおそるおそる付いていった。
寝そべっていたと思ってたチンピラは血をだらだら流して倒れていただけだった。そのうちの一人の
服で、兄ちゃんはクツとかについた血を拭っていた。平然とした顔で。
そして再び夜道を歩き出した。俺はむしろ兄ちゃんにビビっていて、何を喋っていいのかわからなかった。
でも何か言わなきゃいけないような気がした。そしてようやく「兄ちゃん強いね。」とだけ言った。
兄ちゃんは「いや、強くはないんだよ、角材でなぐった。」と答えた。
435 :( ´∀`)ノ7777さん 2006/11/04(土) 10:57:19 ID:4YM2LyMo
聞かなきゃよかったと思った。
「あそこ、よく角材とか置いてあるんだよ。誰が置くんだろうねえ。」
兄ちゃんはほんとに平然というか、飄々としていた。
「そんなんで殴っていいの?」と俺が聞くと、
「頭ちょっと切っただけだからねえ。ほんとうはあばらの骨折るくらいやんないといけないんだよ。」と言った。
それは兄ちゃんがアレックス打ちながら言った
「ほんとうは毎回チェリー狙わなきゃいけないんだよ。」と同じ口調だった。
なんだか変な感じがした。
436 :( ´∀`)ノ7777さん 2006/11/04(土) 10:57:50 ID:4YM2LyMo
そんでさっき財布を埋めた植え込みに行った。兄ちゃんは一瞬変な顔をして、「なんで埋めたの」と
言った。俺がこれこれこういうわけでと説明すると、なんか複雑な顔をした。
「え、何、加勢に来てくれたの?」
俺はなんかその瞬間一気に緊張がほどけて、自分が情けないやら、兄ちゃんが怖いやらで
泣いてしまった。
兄ちゃんは笑いながら「泣くほど怖いなら、家帰って寝てりゃよかったのに。」と言った。しばらくの
間笑ってて、それからなぜか「助け賃。」と言って二万円くれた。
それから受験やら何やらで、気付いたら会えなくなってたけど、兄ちゃん見てますか。
俺は立派なスロプーになりました。
良かったら今度一緒に打ちませんか。あの店潰れちゃったけど、跡地に新しく立った店があるんで
まあロクな店じゃないですけど、夕方は大抵いるんで、良かったらまた並んで打ってください。
【転載元】http://news18.2ch.net/test/read.cgi/slot/1161672656/ ●注目記事
この記事へのコメント
ってかいたけど ホントにいい話 作り話でも面白い!
なんか悔しい
また再会できるといいな
いい話なのか?これ(笑)
おめぇの感想なんかきいてねぇよぼけ
パチンカ/スが多い中、裏表無しで助けに来てくれる奴って本当にありがたいんだよな
なんでかしらんがウルッときた
てか893?
作り話とは断定できない。
ともかく俺はこの話、好きだな。
すげー分かる
旧北斗前ね
小花火打ってた兄ちゃん元気かな
親切で優しかったわ
あの頃のがホールは和やかだったわ
目押ししたらコーヒーくれるのが当たり前だし、ボナ確でメダルなかったら隣のおっさんが無言でメダルくれたりして、揃えたら無言で俺もメダル多めに返したりしてたわ
【面白記事】 | 【スロパチ関連】 |
- 今日も負けた名無し - 2012年11月26日 08:28:25